JISART施設認定審査とは
認定審査の目的はART施設でガイドラインが順守されているかを確認するためで、認定されることはその施設の医療の質がJISARTの定める医療標準に達していることを意味します。
今回の認定審査はわが国では初めての試みで、公平を期するために、最初の3年間はオーストラリアRTAC委員長であるSaunders教授等にコンサルタントとして審査チームを組んで頂き、日本の施設に対する審査を実施し、その推薦によってJISARTより認定証を発行しました。Saunders教授は第1回審査に先立ち2003年と2004年にJISARTの全施設を見学されており、認定のための改善案が提出され、それにそって各施設は改善を試みてきました。また高橋理事長は科学者、看護師、患者代表と一緒に2004年9月にオーストラリアでのFSA-RTACによる inspectionに参加して、方法について学び、JISARTに報告しています。
第1回JISART施設認定審査は2005年2月に12のJISART施設で実施されました。 |
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| (1)審査前準備 |
審査日の1ヶ月前までにFSA-RTAC様式の質問表に回答して委員長へ提出することになっています。
質問内容は施設全体、看護部門、Laboratoryの部門に分かれており、それぞれの管理体制、職員の資格、背景、経験および前年度における教育、訓練実績について報告するよう求められています。オーストラリアではカウンセラー部門についても質問があるのですが、わが国では現在心理カウンセラーのいる施設が少数なので今回の審査対象からはずされました。前年度の臨床成績についての報告も求められますが、公平を期すため患者の年齢35歳未満でIVF2回未満の成績、凍結胚移植法の成績、OHSSで入院した症例などが報告されました。 |
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| (2)審査当日 |
審査員としてはSaunders教授(医師)、科学者、看護師の3名がオーストラリアから、患者支援組織(Fineについては後述)より患者代表2名(1名オブザーバー)が日本から出席しました。施設側からは院長、IVF部門看護師長、Laboratory責任者、受付責任者が出席しました。さらに事前にFineを通して集められた、施設に通う(通った)背景の違う患者4名以上が審査後の患者との意見交換のために参加しました。さらに同時通訳2名が同席しました。
出席者全員が自己紹介を行い、守秘義務誓約書に署名後、Saunders医師より質問書の回答内容についての確認、質問があり、その後科学者、看護師からも質問がありました。
質問内容は主に施設の概要、スタッフの資格、前年度ART症例数、多胎率、排卵誘発法、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の頻度などでした。臨床成績については今回JISARTから提出された3、000例を超えるデータを基に平均値を求め、その審査施設における成績が平均値から大きくはずれている場合には説明が求められました。とくに胚移植数や多胎率に質問が集中しました。 |
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| (3)グループ別施設審査 |
全員ミーティングが終了後、医師、科学者、看護師(患者代表も)の3つのグループに分かれて施設内を審査しました。
施設内審査の基本内容は下記の通りでした。
(a)施設が患者本位に設計されているか、すなわちプライバシーが保護されているか、
(b)安全か。組織、その責任者の明示、事故予防のための管理、緊急時や事故発生時の対応法についての書面マニュアルが存在するか、
(c)スタッフの教育、訓練の実施と記録があるか。
決して高価な施設、医療器械を求めているのでなく、患者の不都合にならないようにしているか、人材の有効利用がなされているかが審査対象でした。
医師のグループでは院長の履歴、診療体制、医師の前年度における教育、訓練(学会出席、発表)の実績、診療内容、治療成績についての定期的スタッフミーティングの開催頻度などについての質問がありました。
診療体制では医師の数、1人の場合はバックアップ体制の有無、緊急時の体制、対応法(火事、地震など)、入院施設がない施設における紹介先病院との連携状況の確認がありました。特にOHSSの症例では、紹介先病院の医師が治療法を熟知しているかについての確認もされました。
施設内の組織図を作成し職員の苦情処理の責任者が明確になっているかの確認もありました。ISOの考えでは一人が全ての問題について責任をとるというシステムは是としていないのです。
そして見学が始まり、待合室、受付、カルテ管理体制について審査され、診察室や看護師との面談室はプライバシーが保たれているかを中心に審査されました。採卵室は救急体制、Laboratoryとの位置関係、採精室やカウンセリング室が適した場所にあるかが審査されました。
科学者のグループではlaboratoryにおける組織図を提出させ事故やトラブルが生じた時の連絡方法、責任者についての明示、安全管理(感染物質の取り扱いなど)、教育、訓練の実施状況についての質問がありました。検体を扱うときのダブルチェックの実施法、休日も同様にダブルチェックが可能か、incubator内の温度、ガス濃度のチェック法、遠隔アラームシステムの設備、凍結配偶子、胚の安全な管理保管法や停電時のバックアップ体制についても詳しくチェックされました。
注目すべきは、たとえベテランの科学者、技師でも年数回は他のスタッフから技術チェックを受けていなければならないことです。これは医師にもいえることであると思われます。Laboratoryはスタッフが、快適に仕事ができ、かつ安全であるかを審査するのであって、決して高価な設備は要求されません。
看護師のグループでは看護師の仕事内容の手順書が存在するか、投薬などの記載がカルテに正確になされているか、患者プライバシーを守っているか、同意書の確認はなされているか、看護師の教育、訓練の実施記録、安全管理、救急器具、薬の管理についての確認がありました。看護師のCPR訓練は最低年に一度実施することは必要とされます。特にわが国の診療状況でプライバシー保護の観点から指摘されるのは、待っている患者さんの前で看護師が他の患者さんと電話で治療内容について話をするという状況です。効した場合必ず患者―看護師のための個室を用意するよう指導されます。 |
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| (4)患者交流会(患者の意見を聞く) |
施設内審査が終了すると審査員は患者から施設に対する評価を聞きます。
患者の選別方法は、各施設の待合室などに今回の審査に協力して欲しいとの趣旨のポスターやパンフレットを配り、希望者は患者支援団体Fineへ連絡し参加をしました。同様事例の患者(例えば妊娠した患者)ばかりにならないようFineが調整しました。基本的には長期不妊患者、通院を始めて6ヶ月以内の人、体外受精を何度か行なっているがまだ成功していない人、妊娠あるいは出産した人などです。しかし患者公募のみで既往歴の違う4組が集まった施設は無く、一部は施設の方から直接お願いして患者さんに参加していただいたのが実情でした。
この患者との意見交換には患者が自由に意見を述べられるよう、施設のスタッフは参加することはできません。約1時間がこの話し合いに用意され、審査委員と患者代表からは患者用パンフレット、同意書の内容についてわかり易いかなどの質問や、施設スタッフの態度、時間外や緊急時の対応、会計の明細がわかり易いか、プライバシーや夫への気配りについて意見を聞きました。患者との意見交換終了後、患者さんは帰宅しました。なお、患者さんには交通費のみが支給されました。 |
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| (5)認定審査 |
最後に審査員は最終的に施設がJISARTガイドラインを順守し、診療内容が標準に達しているかを判断します。まず委員長が総論を述べ、各審査員に重大な問題点が存在するかを確認し、無ければ改善すべき点についての意見を聞きました。患者の意見も同様に取り入れられます。その後、施設のスタッフが入室し、委員長が審査についての感想を述べ、主たる改善すべき点について述べました(推奨)。施設側からの質問、意見をこの時に聞きます。
施設の審査に要した平均時間は約4時間でした。
審査の詳細については3か月後にJISARTへ報告書が提出され、最終認定がJISARTによって決定されました。この認定審査に合格したのは10施設で3年間の認定期間が与えられました。2施設についてはJISART認定のためにはさらに改善が必要と判断され,改善後再審査が必要という結果でした。2007年度まで同様の方法で審査を行う予定です。3年の間にJISART創立メンバーは監査方法を学び、2008年からの審査はJISARTのRTAC委員が実施する予定になっています。 |
| (高橋克彦 JISART初代理事長) |
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